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「ゴールは "入院しない" 」


 8年前にパーキンソン病と診断されたボヌールさん。 右上肢の振戦から始まり徐々にすくみ足や突進歩行などがみられ、診断から3年が経過した後、 ADLの維持や転倒予防のために訪問リハビリが開始となった。
 リハビリでは、すくみ足の改善のため一歩目が出るように歩き始めの指導を行っていたところ、 家族も本人に声かけしてくれるようになり日常生活でも大股で歩く動作を獲得することができた。 しかし、病気の影響により狭いところではすくみ足になりやすい。 そのため、床の色とコントラストをつけたテープを貼り歩幅を大きくするような視覚的工夫や、 トイレの中心に座れず便器の周りを汚してしまっていたため、 定位置に座れるよう床に足型マークのデザインを施すなど、自宅の環境を整えた。


 リハビリを行っていくと生活状況が改善されるだけでなく、転倒の回数が徐々に減少したり、 突進歩行により家具にぶつかったりすることも少なくなった。 その結果、本人だけでなく妻からも笑顔が頻繁に見られるようになり、 できることが増えたことで自信にも繋がっていた。 そのため外出に対する敷居が下がり、夫婦で買い物や食事にも行けるようになった。 またデイケアにも行けるようになったことで、妻も自分の時間を持ち、 趣味である映画を観に行けるようになった。


 ただ、夏になるとごはんが食べられなくなり、 夜に原因不明の発熱などにより調子が悪くなってしまうことがあった。 入院にまで至ると「やっぱり入院しなきゃ治らないんだな」と暗いトーンで話されていた。 その様子を見て妻は「がんばってるんだからこんな姿は見たくないし、 自信を失って欲しくない」と熱く思いを伝えてくれた。 そこでリハビリのみの関わりでは必要な支援が不充分だと考えられたため、 看護師から本人と家族へ入院をせずに在宅生活を送れる可能性があることを説明し、 『入院しない』ことを目標に訪問看護も行うこととなった。


 訪問看護を行うまでは数年間に渡り、同時期に悪性症候群で毎年入院していた。 リハビリ時にはボヌールさん用にアレンジしたパーキンソン病日誌を使い、いつ頃調子が悪いのか、 どんな症状が出やすいのかを本人や家族がわかりやすく書けるように工夫を行ったため、 医師へ自分の症状や思いをより細かく伝えられるようになった。 また、みなとも でも医師との連携を図りつつ、担当のリハビリスタッフと随時話し合いを行った。 ボヌールさんの身体状況を検討したところ、足の指の動きが悪いことや、 下肢の浮腫が強く循環が悪くなっていることに着目し、訪問看護での足浴を導入した。 足浴を通してマッサージや足趾の関節を動かすことで循環を改善しつつ自律神経を整えた。 夏では体温調節がうまくいかないことで悪性症候群を発症していたが、 導入してからは入院せずに家で過ごすことができた。 ケアの様子を見て妻は「本当に助かってる。家にいてもこんなことしてもらえるなんて思わなかった。 もっと早く使ってればお父さんも私も楽だった」といった声をもらうことができた。


 パーキンソン病は進行性の疾患であり、一人ひとり症状が微妙に異なっている。 そのため本人と周りにいる方々の思いやペースに合わせ、 専門家がすべてに口出しや時間の拘束をするのではなく、 その方々に必要な医療を提供し温かく見守る姿勢で関わっている。